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六君子湯は胃腸薬ではありません

『43番・六君子湯(りっくんしとう)』はツムラの売上げのための強化に選ばれた漢方薬です。

先日の9月の週刊新潮の記事にも、ツムラの赤字挽回のための経営戦略であげられた漢方薬の一つと記載されています。

病院では「六君子湯」を胃腸薬として簡単に患者さんに処方されています。

ですが、六君子湯(りっくんしとう)は胃もたれや胃痛の薬ではないですし、便秘や下痢の薬でもありません。

ハッキリ言って病院では病名漢方と同じく、症状に合わせたマニュアルをもとにしているため、六君子湯を胃腸薬と勘違いして処方しています。

実は病院では漢方薬に限らず西洋医学的にも胃の問題に対して「胃酸を抑えるか」「胃酸を出させるか」のほぼ二択でしか治療を考えていません。(ちょっとだけ神経系も)

ですから、過去に胃の調子が悪くなって病院に行った経験がある方なら、胃酸を抑える薬か、胃酸を出す薬のどちらかか、なぜかそのどちらもを処方されたご記憶があるかも知れません。

西洋医学の治療方法でしたら、ちゃんと治るかどうかは別として、その2択で問題はないかも知れません。

しかし、言うまでもなく「六君子湯」は漢方薬です。

常識的には西洋医学の理屈では処方できないのです。

六君子湯は「脾胃の虚証(きょしょう)」「血虚(けっきよ)」「水毒(すいどく)」という3つの証をもっている方に合わせます。
特に胃内停水(いないていすい)といって胃に水がたまり、もたれたりする原因となる余分な水を排出するというものですが、やっかいなのは、胃の問題は水だけではないのです。

漢方での胃腸の問題は証的には「脾の熱証」・「脾の気滞(消化器の気が滞っている)」・「水滞の証」・「脾の虚証(消化器自体の力が弱っている)」•「寒証(脾が冷えている)」・「脾胃の水毒(胃に余分な水が溜まっている。六君子湯はこれ!)」というパターンがあり、この状態は個人差によってわかれます。

それが体質であり「証」なんです。

例えば胃腸を特に大きな問題と考えて、候補として考えられる漢方薬は22種類ほどです。

この22種類の漢方薬にはどの漢方薬にもあてはまる共通した症状として「胃痛、胃もたれ」があるので、医者がやっているように「胃痛、胃もたれ」など胃の症状だけで漢方薬を選ぶなら22パータンの漢方薬全部があてはまることになりますので、マニュアルでなく、まじめに漢方薬を処方する場合、医者はどうするのでしょう???

この22処方から適当にエイッってダーツででも選ぶのでしょうか・・・

普段から「胃酸を抑えるか」「胃酸を出させるか」の2パターンでしか治療を考えていない医者では漢方薬で胃腸を治すのは複雑すぎてついていけないと思います。

また、六君子湯は胃の薬ではなく、主に「脾の臓」の薬です。
漢方医学での『脾(ひ)』は胃のことではありません。
脾は消化器全般を示し消化吸収だけでなく血や水が血管外などに余分に漏れ出ないようにする働きもしています。
それを漢方では「統血(とうけつ)」と言います。

六君子湯を飲めば、胃の問題だけでなく『脾(ひ)』の問題に作用しますので、イメージとしては、胃の部分だけではなく、体全体にめぐる水・血液に対しても何かしらの効果(悪い場合は副作用)が与えられることになります。

今後、病院での胃腸の治療に漢方薬(多分、「六君子湯」)を出された場合、当たり前ですが、胃の問題なので毎日食べている食事の内容や食べている時間なども問診をとる必要がありますが、その問診がなければ不思議に思ってください。

「なぜ、毎日の食事のことは無視?」

漢方薬は漢方薬の効果だけで治すのではなく、体調を整え胃を自分で調整できるように促すことが目的ですので、当然、食べている食事内容や食べている時間なども聞き出して調整する必要があります。

そして、その漢方薬を処方した理由を聞いてください。もし「この漢方薬は、胃腸薬みたいなものですよ。」なんていう適当な説明をされたら「だったら初めから漢方薬ではなく、胃腸薬でいいんじゃないですか?」とキッパリと切り返してみてください。(笑)

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ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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