漢方専門まごころ漢方薬店

ツムラの「漢方の大嘘」の記事を詳しく説明!その1

お店に来られる方が、皆さん「最近、電車の釣広告の「漢方の大嘘」を見たのですが、ツムラの漢方がえらく叩かれてますね。なんなんでしょうか?」と…

これが、その噂の雑誌です。

うちは漢方相談をやっておりますので患者さんからの質問を無視するわけにもいかず、早速コンビニで買って、読んでみました。

内容は、大病院の副院長と漢方専門医のクリニックの院長、それぞれ漢方の考え方が違うということで戦っていらっしゃるのですが、正直、どっちが悪いとかよりも、どちらも西洋医学の病名を元にしたご意見で、そもそも漢方は東洋医学というテーブル上で話されていないことに、読んでて両方に何度もツッコミを入れてしまいたくなる記事です。

具体的にどういうことかと言いますと、ツムラが認知症に効果があると医者に説明し、医者はそれをそのまま自分では何も考えずにアルツハイマーの患者に「抑肝散(よくかんさん)」を処方しました。

その抑肝散で高齢者への副作用被害が出たのですが、その副作用が出たのは「抑肝散」の主成分である「甘草(かんぞう)」という生薬が影響したためだと書かれています。

西洋医学的、科学的にみれば、それもあるかもしれないですが、そもそもこの話は漢方の話なのです。

この論争の意味のないところは、そもそもアルツハイマーという西洋医学の病名の方に同じ漢方薬を処方すること自体、漢方医学ではありえないのです。

副作用が出た抑肝散が悪かったのかどうかではなく、『体質(証)に合わせて漢方薬を選んでいないこと』が本来の漢方からすると大問題なのです。

突っ込んでいる方も突っ込まれているツムラも両者ともに、その体質や証のことは華麗にスルーし『西洋医学の病名』『東洋医学の漢方薬』を処方していることの滑稽さに一切、触れていないところが、いかにも西洋医学のお得意の間違った漢方、『病名漢方』『症状漢方』だなと思いました。

漢方は、体質を分析し、それに見合った漢方薬を処方します。

まず、その方の体質(証)は何?というとこらから始めるのが、漢方です。だから、うちの問診は200項目はあります。

人の体質を診るのには、それくらい必要だからです。

うちの問診票

同じ「アルツハイマー」という病名であっても、単純に女性なのか、男性なのか、と性別だけ違っても体質や選ぶ漢方薬は全く違ってきます。

例えば、過去に子宮を摘出手術をしたことがある方で、太っている女性のアルツハイマー病の方と高血圧で糖尿病を持病とするやせた男性のアルツハイマー病の方が全く一緒の体質だと思いますでしょうか?

そんなわけないですよね。医学が素人の方だって「違うんじゃないか?」ってわかるかと思います。

その体質を無視して両者ともに「アルツハイマーの人は抑肝散」なんて話を進めています。

『人それぞれの体質』完全無視!

そもそも漢方医学の考えを基に考えれば、同じアルツハイマーの人でも絶対に違う漢方薬になります。

同じ病名であっても、その患者さんの体質は全員同じではないから、同じ漢方薬を処方したって全員に効くわけがないのです。

そして、漢方の中の生薬が持っている成分が影響を及ぼすという指摘がとても変に思います。

漢方生薬に含まれる成分を一つだけ取り出して副作用の原因だとしていますが、ここで指摘されている『甘草(かんぞう)』は、漢方処方のほとんどに入っているのです。

漢方薬を飲むということは甘草を飲むともいえます。

「甘草」は飲んだら危険ですと言うのは漢方医学としては、こっけいな話です。

それだったら『漢方薬ほぼ全部に甘草が入っている』ので漢方薬を飲んじゃダメです!と言わないとおかしいです。

これも成分的な問題はあるかもしれないですが、そもそも漢方薬と体質(証)を合わせていないことが、そもそもの問題なのです。

この雑誌の中で「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が「甘草」を最も多く含む漢方薬として、副作用が重篤になりやすいと取り上げられていますが、漢方専門家から見たら、甘草を危険視するより「芍薬(しゃくやく)」に注意を払わないといけないのにと思ってしまいます。

この「芍薬甘草湯」は「芍薬」と「甘草」が約半分ずつの割合で構成されています。ですので、量の話で言えば「芍薬」もかなりの量と言えます。

「芍薬」は単体で使用するほど強く、患者さんの体質や病状によっては『禁忌』として注意しないといけない生薬なのです。

ちなみに芍薬に限らず、漢方薬の生薬構成は数が少なくなるほど、作用が強くなります。この作用というのは、副作用とか良い作用ではなく単に体に及ぼす「作用」が強くなるのです。

これも漢方の医学理論では当たり前のことです。

『麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)』についても、またまた「麻黄(まおう)」は成分にエフェドリンという覚せい剤と同じものが含まれているから、危険であるという内容ですが、それもそうなのですが「附子(ぶし)」の危険性を指摘しなくていいのですか?とこっちが突っ込みたくなります。

「附子(ぶし)」って、毒であるトリカブトの事です。

殺人事件のドラマなどでたまに出てきますよね。

本当に「附子」だけを飲んだら、死ぬことだってあるのです。

→麻黄(まおう)=エフェドリン=麻薬中毒 ですが、

→附子(ぶし)=トリカブト=毒=死 です。

そのどちらもが含まれるこの漢方処方は、漢方を何もわかっていない人が扱えば、とても危険です。

副作用どころの騒ぎではないですよね。

なんだか、附子(トリカブト)のことに触れていないこと自体、『突っ込んでいる側の医者も頼りないな』と感じました。

ついでに、「細辛(さいしん)」は、強い辛味の生薬です。

漢方医学においては、「麻黄附子細辛湯」は、気血両虚の方には処方してはいけないとなっています。

これは西洋医学の成分の問題ではなく、東洋医学の医学理論から考えると、そうなります。

もはや漢方薬を西洋医学風に「〇〇成分が入っているから、危険です。」としてしまってる時点で漢方薬を完全に勘違いしています。

突っ込んでいる医者も、突っ込まれているツムラもどちらも『東洋医学を無視して、西洋医学の病名や西洋医学の薬理である成分で判断しようとしているところ』なんかに、あさっての方向を突き進んでいる漢方業界に絶望を感じます。

とにかく、お医者さんは、漢方は東洋医学なので、東洋医学を勉強したほうがいいですよ。

西洋医学の有効成分なんて、漢方薬では何の関係もありません。

そんな感覚では、一生、まともに漢方薬を扱えないと思います。

もっともっと、ツッコミたいところですが、長くなったのでこれくらいにしたいと思います。(笑)

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ブログの著者 東洋医学カウンセラー 松村陽子

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