漢方専門まごころ漢方薬店

生薬が多いとか濃度が濃いほどいいの?

とある病院で漢方を処方された方が、常に7〜8処方を同時に飲むように漢方薬を出されたというお話を最近聞きました。

その漢方薬が「ちょっと信じられない」感じだったのです。

なぜかというと、通常、漢方薬の処方は、いくつかの生薬で構成されています。
ひとつの漢方処方の中には、だいたい8種類以上の生薬が入っています。少ない場合でも3・4種類の生薬構成となります。

有名な「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」の処方構成は、当帰、川芎、芍薬、茯苓、白朮、沢瀉で、全部で6つの生薬からなっています。

どんな病気だったら1度に7,8種類もの漢方薬が必要なのか想像もつきませんが、もし7つの漢方薬を同時に出したら、少なく見積もっても1漢方薬=6生薬として、7X6で42種類の生薬を一緒に飲むことになりますよね。

厳密には、その中には、同じ生薬がかぶっているので、もう少し生薬の種類が減るかもしれません。
でも今度逆に、そのために同じ生薬がいくつも重なることが、また問題でもあります。

それは、どういう事か?
例えばですが葛根湯(かっこんとう:処方構成は、7種類の生薬)と麻黄湯(まおうとう:処方構成は、4種類の生薬)を一緒に飲んだとしたら、それぞれの構成生薬の中にどちらにも麻黄(まおう)と桂皮(けいひ)と甘草(かんぞう)が入っています。

麻黄(まおう)という生薬はどちらかというと強めの生薬ですので、服用の際には、かなりの注意が必要な生薬です。
複数の処方を合わせたために生薬が被ってしまい、麻黄の比率が変わってしまったら、葛根湯においての麻黄の意味合いも麻黄湯においての麻黄の比率がもつ意味合いもいきなり崩れてしまいます。
どっちの処方の目的も果たすことができない状態をつくり出してしまいます。
もし、麻黄の比率を上げたいだけであれば、麻黄を生薬として足せばOKです。

なぜ、たくさんの処方を一緒に飲むと良いという考えになるのか???
大概の漢方薬の比率やバランスを考えずにたくさんの種類の漢方薬を合わせると生薬の比率が大きく変わってしまい、本来の漢方薬ではなくなってしまうので、この方法は疑問に思います。

また、「濃度が濃い!」からよいとされる漢方薬もあるようですが、これもちょっと本来の漢方治療と違うように思えます。
漢方薬というのは、生薬が決められたバランスで構成されているから、効果があるお薬です。なのに、その中の生薬だけを一つ取り出して、濃縮したりすることによって、高級感を出す事はできますが漢方処方のバランスは大きく変わってしまいます。

例えば、ケーキをおいしくしている砂糖は人間が生きていくためのエネルギー源となりますが、砂糖が良いからと砂糖ばっかり増やしていくとどうなるでしょうか?
味もバランスも台無しですね。

言わば、なんかよくわからない奇妙な漢方薬を作り出しているのと同じです。
オリジナルと言えば、聞こえがいいですが、この場合は「ただのいいかげん」ですね。
過去の文献にあるような効果を期待したとしても、果たして濃縮されバランスを崩された漢方薬で、同じような効果、またはそれ以上の効果は期待できません。
なぜなら濃く作った時点で、ちがう漢方薬に変わってしまっているからです。

なんとなく、たくさんの種類のお薬や濃いお薬を一度に飲むことは、一見、効果が強そうで、体に良さそうに思いがちですが、人間の体が受けきれる量や濃度というものが存在します。
大人と子供では飲む量は必ず違うのは、そういう理由があるからです。
ある決まった量しか、体は代謝できず、余分なお薬は体の外に要らないものとして排出されるようになっています。
濃度が濃いと単純に通常のものより、代謝に時間がかかってしまうか、オーバー量はあっさりと捨てられるだけでしょう。

漢方薬が体に及ぼす影響はどれも同じ理屈なのに、たくさんの処方や濃度が濃いものが良いとされる考えが存在するのが、私には不思議ですね。

せっかく漢方薬で体を元気にしようとしているのに、量を増やしたり、濃度を濃くしたりすることによって、生薬のバランスが崩れて反対に体の調子が悪くなってしまうと思います。

もし、一度にたくさんの種類の漢方薬を飲むように勧められたら「今後、どういうふうに体調等が変わっていくのか?」という治療の方針を聞いてみてほしいと思います。
必ず、体質(漢方でいうところの証)に対して、どのように対応しようとしているのか。というところを確認することをおすすめします。
漢方は事前に治療方針が必ず必要な治療ですので。

ブログの著者 東洋医学カウンセラー 松村陽子

ブログの著者 東洋医学カウンセラー 松村陽子

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